目まぐるしい現代社会において、職場での悩みなどでストレスを日々感じながら過ごしている方は多いのではないでしょうか。悩みは誰もが持つものです。
ポジティブ心理学は、そんな悩みを解消し、全ての人が仕事や家庭においても心の底からやりがいや、喜びを感じながら生きていけるためにつくられました。
本記事ではポジティブ心理学が提唱するどんなに時でも心の底から幸せを感じることができるために必要なものについて様々な角度から具体的な実践方法も交えてご紹介します。
Contents
ポジティブ心理学とは?
ポジティブ心理学は、1998年当時アメリカの心理学会の会長であるマーティー・E・Pセリングマン博士によって発表された学問の一つです。これまでの心理学の特徴としては、心の病気などネガティブな面を中心に研究を行っていました。
しかし、ポジティブ心理学は従来の心理学とは反対に、心のポジティブの面に焦点をあてて、全ての人がもっている本来の可能性を伸ばしていくことをテーマとした新しい学問です。
人間が幸せを感じながら生きるためにはどうすれば良いのでしょうか。ポジティブ心理学が提唱する幸せについてご紹介します。
幸せ(ウェルビーング)をつくるポジティブ心理学のPEAMAの法則とは?
ポジティブ心理学が唱えるウェルビーング(幸せな状態)をつくりだすには何が必要な法則としてPEAMAの法則を挙げられています。
PEAMAの法則とは具体的に以下の5つのポイントのことを指します。
5つのポイント
① Positive emotion(ポジティブ感情)
② Engagement(エンゲージメント)
③ Relationship(人間関係)
④ Meaning(意味・意義)
⑤ Accomplishment(達成)
一つ一つ詳しく解説します。
ポイント1|Positive emotion(ポジティブ感情)
ポジティブな感情とは「笑い」「嬉しさ」「楽しさ」「感謝」などありのままに幸せを感じられる状態のことを指します。
心理学的に、ポジティブな感情が人の与える効果について次の点が挙げられています。
・ポジティブな感情は考えやアクションの選択肢を広げる。
・ポジティブな感情は心の中のネガティブな感情を解消する。
・ポジティブな感情は、回復力を大きく高める。
・ポジティブな感情は心のゆとりの幅を広げる。
・ポジティブな感情は人をさらに成長させる
このようにポジティブ感情は人間の心理において幸せを広げる大きな良い効果があり、必明るく生きていく上で必要不可欠な要素です。
ポイント2|Engagement(エンゲージメント)
エンゲージメントとは時間を忘れるほど何かに夢中になったり、没頭したりする状態のことを指し、幸福を感じる上で大切な柱となります。
人は何かに夢中になってチャレンジする時、どんな嫌なことも楽しみ満喫しながら行動することができます。
嫌いな科目の授業を受けているときは、時間が長く感じますが、好きなスポーツやゲームなどの趣味に励んでいるときはあっという間に時間が過ぎてしまいます。
エンゲージメントの働きを上手に活用することによって、仕事でもパフォーマンスを最大化することができるのです。
ポイント3|Relationship(人間関係)
人が幸せを大きく左右するものとして他者との社会的なつながりを挙げられています。私たちが日々抱えるストレスも社会的なつながりによって解消されることが多いからです。
何か仕事でつらいことがあっても相談できそうな友人や、家族がいなければ一人で抱え込んでしまうことにつながり、結果としてうつや思い込みによるストレスに苦しんでしまうことにつながるケースが多いです。
反対に、何かつらいことがあっても一緒に笑い合える友達や、家族がいるだけで気持ちは楽になります。また人とのつながりは、孤独でいるよりも心理的に幸福度が高く、長生きもしやすいという科学的根拠もあるのです。
ポイント4|Meaning(意味・意義)
意味・意義とは「人生に対する目的や価値観」のことを指し、人生をポジティブにかつ幸せに生きていくために重要なものの一つです。夢や理想に向かってチャレンジしている人は生き生きして見えるのも、人生に意味を見出しているからです。
また、人生に目的をもつことは短期的ではなく、長期的な幸せを保つことにつながります。例えば、何かおいしいお菓子を食べたとしてその時は幸せでも、数分後には幸福感もなくなってしまいます。
しかし、夢や理想など人生に目的をもつことは、時間がたっても心の満足感は小さくなりにくく、強く意識すればするほど心の満足感か幸福感も大きくなります。生き生きとしたポジティブな人生を歩むためには人生の目的や意味を考えることは効果的なのです。
ポイント5|Accomplishment(達成)
Accomplishment(達成)とは、人は成功体験を積むことによって心を満たすことができるという考え方です。テストで良い点をとったり、これまで自分ができなかったことができるようになると達成感に満たされ、心に充実感を覚える経験は誰もがあるでしょう。
人生の価値や目的を追い求めて、小さな成功体験を積み重ねていくことは幸福感を大きく広げる大切なポイントになります。
ポジティブ心理学の土台となる3つの考え方
次にポジティブ心理学の土台となる3つのポイントについてご紹介します。
3つのポイントは下記の通りです。
① フロー
② レジリエンス
③ 楽観主義
詳しく解説します。
考え方1|フロー
フローは先ほどPARMAの法則でもご紹介したエンゲージメントの考え方です。
ポジティブな感情に必要な感動や、快楽、喜びを抱くための一つの方法として心理学者のチクセントミハイはフロー状態を体験することであると提唱しています。
フロー状態が人間の心理にもたらす効果として、「パフォーマンスの向上や」「成長による新しい自分の発見」「時間を忘れるぐらいの楽しさ」などが挙げられます。フローの状態に入るための条件として以下のような点が挙げられています。
・明確な目標やフィードバック
・不安なことを忘れる
・成功をイメージする
考え方2|レジリエンス
レジリエンスとは「回復力、弾性」を意味しており、つらいことがあっても負けないマインドをつくることです。
仕事上でうまくいかなかった。失敗した、怒られたなど様々なことがあるでしょう。
一時的には落ち込むことがあっても気持ちを入れ替え、また新たにチャレンジを開始できるようになるためにもレジリエンス力が必要になります。
レジリエンス力を高める方法として以下の点が挙げられています。
・自分を知る
・自分をコントロールする
・自信を持つ
・人とのつながり
どんな困難にも負けないマインドをつくるためにも、レジリエンスを意識することが大切です。
考え方3|楽観主義
楽観主義とはつらいことから逃げることではなく、つらいことも気楽に考えて楽しみに変えていく考え方で幸せの感情に直結しています。
有名なアスリートの人々は、つらいことがあっても自分を成長させるチャンスと捉え、楽観的かつ前向きに物事を捉えるのもこの楽観主義に通じます。
楽観主義者は、何かつらいことがあっても「いつまでもこの状態が続くわけではない」と気を楽にして割り切ってしまい、ストレスとなる考えから自分を解放することができるのです。
幸せを感じる4つ因子
ポジティブ心理学では、「幸せ」を「原因」であると定義する考え方があります。これは幸せを目指すのではなく、今ある幸せを見つめ大切にすることです。
次に幸せを感じるために必要とされる4つの因子については以下の通りです。
① 自己実現と成長の因子
② つながりと感謝の因子
③ 前向きと楽観の因子
④ 独立と自分らしさの因子
詳しく解説します。
因子1|自己実現と成長の因子
人は何かの実現に向けてチャレンジして、成長する時に幸せを感じることができます。
これは先ほどご紹介したPARMAの法則のMeaning(意味)やAccomplishment(達成)に通じています。
人は人生の目的を失うと、やる気や行動の活力を失います。
長期的な幸せを感じるためにも、何かの目標を立てて挑戦することが大切です。
因子2|つながりと感謝の因子
つながりや感謝はPARMAの法則のRelationshipにあたります。
人は他者とのつながりの中で、感謝や相手に喜ばれる何かをすることによって心を満すことができます。
人とのつながりの因子が幸せにつながっているのです。
因子3|前向きと楽観の因子
つらいことがあっても「何とかなる」と物事を気楽に捉える因子も幸福感に大きく起因します。
自己実現やつながりの因子の効果を最大化するためにも、前向きと楽観主義の因子は大切です。
前向きと楽観主義の因子は、どんな困難も楽しく捉えることができ、成長するための力に変えていけるからです。
因子4|独立と自分らしさの因子
人間の傾向性として、他人と比べてしまって劣等感に苦しんでしまうことがあります。
例えば、仕事などでも「あの人は成果を出しているのに、自分は何も結果を残せていない」と人生の中で感じたことのある人も多いのではないでしょうか。
他人と比較せず、ありのままの自分らしく生きることによって、周りの風潮や他者を気にすることなく心にゆとりをもって生きることができます。
ありのままの自分を確立することがそのままポジティブと幸せな感情を支える因子になるのです。
強みを活かすポジティブ心理学とは?
どんな人にも弱みもあれば、強みもあります。多くの人々は弱みに集中してしまい、ネガティブな感情を抱いてしまう傾向がありますが、強みを認識することによりポジティブな心理をつくり出すことができます。
ポジティブ心理学の中で提唱されている人のもつ強みとして6つに分類されます。
① 知識・知恵(創造性・好奇心・向学心・柔軟性・大局観)
② 勇気(誠実・勇敢・忍耐力・熱意)
③ 人間性(親切心・愛情・感情的知性)
④ 正義(公平性・リーダーシップ・チームワーク)
⑤ 節制(寛容・謙虚・思慮深さ・自立心)
⑥ 超越性(審美眼・感謝・希望・ユーモア・スピリチュアリティ)
どんなに人にも強みは必ずあります。
人生をより楽観的に力強く生きていくためにも自分だけの強みを認識し、行動することを心がけていきましょう。
ポジティブになるための具体的な実践方法
次にポジティブになるための具体的な実践方法についてご紹介します。
実践方法は下記の通りです。
・身近な人に感謝の言葉を伝える。
・自分の強みを知って、誰かに貢献にする。
・ネガティブな気持ちを無理に否定しない。
・理想とする自分の姿を毎日イメージする
・マインドフルネスを生活の中に取り入れる。
・ABCDE理論を心がける
・3:1の法則を心がける
詳しく解説します。
方法1|身近な人に感謝の言葉を伝える
人がポジティブな感情を抱くためには、周りの人とのつながりを認識し、感謝の思いをもつことが大切です。例えば、いつもお世話になっている家族や知り合いに人にお礼を伝えてみるや当たり前のことにありがたさを感じるでも構いません。
感謝の気持ちをもつことはポジティブな感情を抱くだけでなく、同時に心の中にあるネガティブな感情を解消することにも効果があります。
方法2|自分の強みを知って、誰かに貢献にする
自分の強みを認識することによって、自己肯定感をもつことにつながります。
人は他者のために行動することによって、PARMAの法則のAccomplishment(達成)を感じることができ、自信にもつながります。
家族の家事を手伝うでも、話すのが苦手なら、何か悩んでいることはないかと職場の後輩の話をじっくり聞いてあげるでもいいでしょう。
自分の強みを認識し、小さなことから誰かのために貢献できるアクションを起こしていくことが大切です。
方法3|ネガティブな気持ちを無理に否定しない
仕事上で、つらいな。しんどいな。と感じることもあるでしょう。ネガティブな気持ちを無理に否定する必要はありません。
ネガティブな自分を客観的に見つめることにより、職場の環境をより良くする新たな気づきを得られるかもしれないからです。
自分一人が抱えている悩みで他の社員も同じく、つらい思いをしている人がいるかもしれません。
ネガティブな感情を客観的に見つめ、問題を改善することによって、職場をより良くすることにもつながるのです。
方法4|理想とする自分の姿を毎日イメージする
毎日、理想的な自分の姿を思い浮かべることはポジティブな感情をもつ上で大切です。
フローの状態つまり、夢や目標に向かって集中している時に無意識のうちに幸せを感じるからです。
脳は想像していることも実際に現実で体験していることと同じように認識します。アスリートの方々もよく、イメージトレーニングを行うのもこのためです。
方法5|マインドフルネスを生活の中に取り入れる
マインドフルネスとは、呼吸を整え心身を安らかに保つ瞑想のことを指します。
マインドフルネスは強みを認識し、心に肯定的な感情をもたらす方法として効果的な方法です。
マインドフルネスは心身の緊張やストレスの解消にも効果的である理由からポジティブ心理学においても大きな役割を果たしています。
方法6|ABCDE理論を心がける
ABCDE理論とはものの捉えた方によって心理的に与える影響や、見える世界観が変わってくるという考え方です。
ABCDEとは具体的に次のような意味を持ちます。
・Activating event(出来事・事実)
・Belief(解釈)
・Consequence(物事の受け取り方)
・Dispute(反論)
・Effect(効果)
Aの出来事をBでどのように解釈したかによってCの結果を感じることができます。
例えば、(A)「仕事で失敗してしまった」(B)「自分はダメな人間だ」(C)「自分なんて必要のない存在なのだという考え」とつながります。
しかし、この時(D)の反論を用いて (B)の解釈を変えることができれば、(E)の新たな効果を得ることができます。
例えば、(B)の「自分はダメな人間だ」に(D)の反論を与えて、「失敗は誰にでもある、これでまた一つ勉強になった!」と捉え方を変えることができれば、(E)新たなポジティブな効果をもたらすことができます。
ABCDE理論は楽観的な考え方を保ち維持する上で効果的です。
方法7|3:1の法則を心がける
ポジティブな気持ちを生み出す方法として、3:1の法則が効果的です。
3:1の法則とは心の中の状態として、ポジティブな感情を3、ネガティブな感情を1とすることで前向きな気持ちを保てる考え方です。
自分ができないことを数えるより、できることを意識した方がポジティブな感情を高めることができネガティブな感情を解消することができます。
3:1の法則は幸せを感じるために効果的です。
まとめ
ポジティブ心理学についてご紹介してきました。ストレス社会を楽観的に自分らしく生きていくためにも、ポジティブ心理学は大きな意味を持ちます。
またポジティブ心理学は個人の幸せだけではなく、組織の改革や幸福にも効果的であることからPARMAの法則を社員全体にシェアさせている会社もあります。
明るく豊かな人生を歩むためにもポジティブ心理学をまずは身近なところから実践してみてはいかがでしょうか。